コラム・お客様の声

暗号資産とステーブルコインについて

このコラムは、2018年12月12日に掲載された「仮想通貨に係る税制について」コラムをベースとし、そのアップデートを行うものです。

 

1.暗号資産の税務

2023年8月6日時点で、世界で流通する暗号資産の時価総額は164兆円を超えております。暗号資産は、日本では資金決済法2条14項一号および二号により、以下の様に定義されております。

 

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

概括すると、ブロックチェーン上で流通する「物品を買ったり借りたりした時の、代金の支払手段」、もしくは、「他の資産と交換や売却ができる資産」とされております。

税法上は、消費税法上は支払手段に類するものとして非課税取引に該当し、一方で、所得税法および法人税法においては、財産的価値を有するものとして売却益に課税されます。(取得原価の計算は、所得税法は総平均法、法人税法は移動平均法が基本です。)さらに、法人税法上は、毎期、期末時点における時価評価も求められております。

相続税法においては、暗号資産に関する規定は何も無いのですが、財産的価値を有するものとして定義されている以上、相続時点における時価評価の上、相続財産に含まれるべきと考えられております。

 

2.ステーブルコイン

暗号資産から派生して開発された、ステーブルコインというデジタル資産があります。実物資産の裏付けの無い暗号資産と異なり、ステーブルコインは法定通貨と紐づき、価格が安定していることが特徴です。

たとえば、香港企業が発行しているテザー(USDT)というステーブルコインは、時価総額としては、ビットコイン、イーサリアムに次いで世界3位の地位を占める一方で、24時間取引量としてはこれらを抜いて世界1位となっており、今後、仮想空間における取引手段としてスタンダードになっていくと考えられます。

ステーブルコインは暗号資産とは別物として、資金決済法2条5項一号~四号により「電子決済手段」として、以下の様に定義されております。

 

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)

三 特定信託受益権

四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

 

上記定義を見ると、暗号資産の定義では「通貨建資産を除き」、ステーブルコインの定義では「通貨建資産に限り」と明確に分けて記載されております。

企業会計基準委員会は、2023年5月31日、実務対応報告公開草案第66号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」等を公表しました。

ここでは、資金決済法2条5項一号~三号に定義された電子決済手段を対象とし、以下のような会計処理を提案しております。

 

■取得時:受渡日に券面額に基づく価額をもって資産計上

(取得価額と券面額に基づく価額との間に差額がある場合、差額は損益処理)

■移転時又は払戻時:第三者に移転、または、発行者から金銭による払戻しを受けるときは、受渡日に、電子決済手段を取り崩す

(電子決済手段を第三者に移転するときに金銭を受け取り、電子決済手段の帳簿価額と金銭の受取額との間に差額がある場合、差額は損益処理)

■期末時:券面額に基づく価額をもって貸借対照表価額とする

(外貨建電子決済手段の期末時円換算は、外貨建通貨に準ずる)

 

また、連結キャッシュフロー計算書の作成基準として、電子決済手段は現金に含まれることが記載されております。

一方で現在、税法上は、ステーブルコイン(電子決済手段)について、特別規定が無い状態です。実務上は上記暗号資産の税務と同じ取扱いをするケースが多いようですが、私法上は別物として定義されているため、今後、国税庁からFAQなどの取扱指針が公表されることが期待されております。

 

何かございましたら税理士法人 税務総合事務所まで、お気軽にお問合せください。

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