令和6年1月18日評価通達6項事件の東京地裁判決について
令和6年1月18日、東京地方裁判所にて相続財産である取引相場のない株式の評価につき、財産評価基本通達6項を適用することの可否が争点とされていた事案の第1審判決が言い渡され、国税側敗訴という衝撃的な結末となりました。
事案の概要として、平成26年6月に相続人が被相続人から相続により取得した取引相場のない株式を財産評価基本通達により評価した価額(1株当たりの価額 約8,000円)により相続税の申告をしたところ、国税側は財産評価基本通達6項の定めを適用し、財産評価基本通達により評価することが著しく不適当と認められるとして、国税庁長官の指示を受けて評価した価額(1株当たりの価額 約80,000円)により相続税の更正処分を行ったことに対し、相続人が現処分の全部の取り消しを求めた事案です。
この事案は、令和4年4月19日の最高裁判決(いわゆる『タワマン判決』)以後において、初めて財産評価基本通達6項の適用に関する司法判断が示されたものとして大いに注目をされた判決でした。
今回の事案と令和4年のタワマン判決との大きな違いは何かを端的に言うと、国税側が租税回避行為の認定を立証出来たかどうかであったと想定されます。
タワマン判決では、「被相続人及び上告人らは、本件購入・借入が近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の期限をも意図してこれを行ったものといえる」と結論づけています。
つまり、納税者側が相続税対策のために借りる必要のない借入金をあえて創出し、相続税を圧縮したことを国税側が反面調査等で丹念に立証し続けたことが国税側の勝訴につながったと考えられます。
翻って今回の事案では、国税側が納税者の租税回避の意図を立証出来ず、結果として国税側敗訴という形で終結しています。
今回の地裁判決によって国税側が「相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行した」ということを立証することはとてもハードルが高いことが浮き彫りとなりました。
また、同時に納税者側も痛くもない腹を探られないよう、過度な相続税対策や相続税の圧縮については注意を要することも肝に銘じなければなりません。
現在、国税側はこの事案について控訴をしており今後の裁判の流れを引き続き注視していく必要があると思われます。
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