コラム・お客様の声

ケーススタディ

国外転出時課税制度(出国税)

平成27年7月1日以後に出国した者より出国税が課税されます。

(1)創設趣旨
租税条約上、株式等の利益については株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされています。
これを利用し、今までは巨額の含み益を有する株式を保有したまま、譲渡益非課税国(例:シンガポール、香港)に出国した後、売却することにより、税負担を回避することが可能になっていました。
しかし、こうした税負担の回避に対応するため、先進諸国(例;アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イギリス等)においては、出国時に未実現利益に対して特例的に課税する措置等を講じているので、日本も国際的な基準に近づける為平成27年税制改正により、国外転出時課税制度が創設されました。

(2)適用対象者
金融資産を評価額合計で1億円以上保有し、かつ、出国前10年以内において日本国内に居住していた期間の合計が5年超である者

(3)対象となる金融資産
有価証券(株式、投資信託等)、国債、地方債、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・発効日取引・デリバティブ取引など

(4)申告・納税について
その対象資産の国外転出予定日から起算して3カ月前の日の時価で含み益を算出し、所得税及び復興特別所得税(15.315%)が課されます。
また、確定申告書の提出期限は出国までに納税管理人の届出をするかどうかにより提出期限が異なります。
【納税管理人を置いた場合】
出国までに確定申告書を提出する義務は無く、出国した年の翌年3月15日(土日祝日の場合は一定の日)にその他の国内所得とまとめて確定申告書を提出します
【納税管理人を置かない場合】
出国までに未実現利益部分についての確定申告を、さらに出国した年の翌年3月15日(土日祝日の場合は一定の日)までにその他の国内所得と併せて確定申告書を提出しなければなりません。

(5)納税猶予の選択
出国税は会社都合による海外赴任のような場合も対象となりますので、出国後に株式等を売却せずにそのまま日本に帰国したりするケースも考えられます。さらに出国税は含み益を課税対象とする為、担税力のないところに課税することになるので、納税資金が不足する事態になることも十分に考えられますので、一定の要件を満たすことにより、最長10年間納税猶予を受けることができます。
また、納税猶予を受けている者は出国後5年を経過する日までに帰国した場合は、帰国等をした日から4月以内に限り更正の請求ができます。
その他と致しまして、納税猶予を受けている資産を譲渡した場合には、納税猶予分の所得税額のうちその譲渡をした部分の金額に応じた所得税について、納税猶予の期限が確定する為、譲渡の日から4月以内に利子税と併せて納税する必要があります
【納税猶予の要件】
■国外転出時までに納税管理人の届出を提出すること
■担保を提供すること
■納税猶予継続届出書の提出(毎年土日祝日を除く3月15日)

※の担保…不動産、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券等

(6)贈与、相続又は遺贈により非居住者に金融資産が移転する場合
上記(2)の適用対象者の有する金融資産が贈与等により非居住者に移転した場合には、その贈与等の時に、上記(3)の対象資産の含み損益が実現したものとみなして本制度が適用されます。

記事作成者:資産対策部 林 歩美

ページトップへ